藤木稟 黄泉津比良坂、暗夜行路

京極夏彦と同じような作風で好きな作家です。京極夏彦から、人間賛歌を抜いたような感じっすか?
個人的な話なんですけど、京極作品の中で、人間は等しく狂う可能性があるってのと、たまたま「魔が差す」刻に行き当たってしまった狂人本人が一番哀しいんだ、という京極堂の科白にはもの凄く共感しています。んだから、このおっさんが言っている事は、わしには良く分かりません。「普通の子」がカッターナイフで「針串刺しの刑だッ!!」っとやっちまったところで、何の不思議もないと思うのですがね。「おかしい子」がやった犯行なら納得できるということなのか?それもおかしいと思うんですけどね。事件自体はもちろん許せるモノでもないし、当事者がそういう「百鬼夜行」に行き当たってしまったのは哀しい事だとは思いますが。
話がそれた。それはともかく、全編通して、怒濤の神秘趣味・怪奇趣味とめくるめく狂気の世界、膨大な知識量。インディ・ジョーンズばりの謎解きのギミックも散りばめられ、お腹一杯の一冊です。怪奇趣味という点では江戸川乱歩、謎解きギミックという点では横溝正史にも似てるかも。
しかし、前編の「血祭りの館」の刊行から6年でやっと後編。おせえよ!最後の最後で、ものすげえオチ(今までの謎解きはなんだったんだ)というのもこの人の特徴ですね。テンダーワールドも、なんだかメロメロの終わり方(結局、伏線処理できてねえよ!)でしたし。まあ、テンダーワールドはまだ続編を出す気でいるからこんな終わり方なのかもしれませんが。
どうでもいいけど、この人、徳間・講談社・光文社とバラバラに本を出してるんですよね。どういう事情があるんでしょか。